「紛争解決」といえば弁護士のフィールド、という考え方は根強く、またそれを疑う余地はありません。特に裁判手続きとなれば、一部は司法書士でも登場する余地はありますが、弁護士の独壇場となります。
ですが、裁判以外の手続きで揉め事の解決を図ることができます。これを『ADR=裁判外紛争解決手続』といいます。
これは、「裁判するほどでもない気がするけど、当事者同士が直接話し合っても解決するのが難しい」ような場面での利用が期待されている手続きで、この手続きには、行政書士が関わることができます。
行政書士が関わることのできるADRは、都道府県行政書士会に設置されている「行政書士ADRセンター」にて行われます。
今回は、そんな「ADR=裁判外紛争解決手続」について、行政書士からの目線で書いていきたいと思います。
ADRとは
そもそも、ADRとは
- Alternative=代替(的)、替わりになるもの
- Dispute=紛争
- Resolution=解決(手続)
という英語で、この頭文字をとって「ADR」と呼んでいます。日本では「裁判外紛争解決手続」と訳されています。
この「ADR=裁判外紛争解決手続」ですが、ADRの利用を促進するため、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」という法律が定められています。また、この法律の第一条に「裁判外紛争解決手続」とは何か?が定義されています。
では、「裁判外紛争解決手続」とは何か?ですが、「訴訟手続によらずに民事上の紛争の解決をしようとする紛争の当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続をいう」とされています。
これを分解してみると
- 民事上の紛争を
- 紛争当事者のため
- 公正な第三者が関与して
- 紛争の解決を図る
制度である、ということがわかります。
ADRでの紛争解決方法
このADRでの紛争解決の方法は一般的に次の3種類があると考えられています。
- あっせん
- 調停
- 仲裁
これらの「あっせん」「調停」「仲裁」のうち、行政書士ADRセンターで行うものは「調停」に当たるとされています。
この調停手続は、当事者同士の話し合いによって解決策を見出す方法です。公正中立な第三者(この場合は行政書士)が当事者の間に入り、当事者双方の主張を聴き取り、どちらも納得できるような解決策を模索し、最終的な合意に至るための手続きとなります。
調停手続は裁判とは異なり、話し合いによる解決手段であるため
- 手続が簡単
- 土日もできる
- 問題解決までの時間を短くできる
- 当事者双方の意向に沿った解決ができる
- 非公開なのでプライバシーが保護される
- 費用が安くすむ
ことが特長です。
行政書士がADRの調停人になるには?
行政書士がこのADRの調停人となるためには
- 行政書士の業務歴が数年以上必要(※3~5年程度・ADRセンターごとに異なります)
- 各都道府県会のADRセンターが実施する調停人候補者養成研修を修了すること
- 紛争の範囲(種類)ごとに定められる基準を満たす
ことが必要となります。
なお、行政書士としての業務歴、候補者養成研修、基準や取り扱える紛争の種類はADRセンターごとに異なります。詳しくは所属する行政書士会へ設置されている行政書士ADRセンターへお問い合わせください。
行政書士によるADR手続の進め方
行政書士によるADR手続、その進め方を箇条書きで簡単に説明します。
- 相談者から都道府県に設置されている行政書士ADRセンターへのお問い合わせ
- 相談者がADRセンター来局での事前相談・ADRについての説明
- 相談者(申込人)による調停申込書の提出
- ADRセンターで受理、不受理の決定
- ADRセンターから相手方へ調停参加の呼びかけ
- 相手方のADRセンターへの来局・ADRについての説明
- 相手方から調停依頼書の提出
- 調停の期日を調整し手続の開始
- 数回の期日を経て合意又は不成立
- 調停手続の終了
という手順で進められます。
まとめ
今回の記事は「行政書士が関わることのできる紛争解決の手続=ADR」について書いてきました。
行政書士の行うADRについては、都道府県行政書士会ごとに設置する「行政書士ADRセンター」で手続が行われます。
当事者双方のスケジュールを調整したうえで丁寧にヒアリングをするので、無理なく審理手続をすることができます。また、裁判に比べて費用も割安です。
取り扱える紛争の種類に制限はありますが、「裁判するほどでもないけど、誰かに間に入ってもらえるといいんだけど…」といったときにうまく機能する制度です。揉め事に見舞われてしまった際には活用してみてはいかがでしょうか。
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